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税理士に相談する前に知っておきたい合同会社設立のための6つの手順

現在の会社形態には、株式会社の他に合同会社というものがあります。

合同会社のメリットの1つとして、設立のためのコストが低いということがありました。
株式会社設立に比べて、費用的にも手続き的にもかなり楽に設立することができます。

今回のブログでは、実際に合同会社を設立するための手順についてお話していきます。
以前のブログで株式会社設立についてまとめたものがあるので、それと比較しつつご覧頂ければと思います。

税理士に相談する前に知っておきたい株式会社設立のための7つの手順




  • 株式会社と合同会社の必要手続きの違い
合同会社設立について株式会社設立と比べると、作成書類の簡易化だけではなく、実際の事務手続きにも大きな違いがあります。


株式会社は定款の認証と登記の申請

株式会社設立のために必要な手続きは以下の2つです。

① 定款の認証
定款とは、会社を運営するためのル-ルブックのことで、作成した定款を公証人役場で認証してもらうことが必要になります。

② 登記申請
会社設立のための最終手続きを登記といいます。
認証した定款などの作成した登記書類を、法務局にて登記簿に登録することで会社設立となります。



合同会社は定款の認証が不要

合同会社設立する場合、定款を認証する必要がありません。
ですので、公証人役場に行くこともありませんし、定款認証のための認証手数料5万円も不要になります。

ただし、定款の認証が不要なだけで、定款自体は必ず作成しなければいけませんので注意しましょう。




  • 合同会社設立の流れ
合同会社設立までにどのような流れで進んでいくのか、ひとまず簡易的にご紹介します。


① 事前準備



② 定款の作成



③ 資本金の振込



④ 登記書類の作成



⑤ 登記申請



⑥ 会社設立後の各種手続き

 

という手順になります。
定款の認証がない以外は、株式会社設立の流れと同じになります。
それでは、1つ1つ詳しくみていきましょう。




  • 合同会社設立のための事前準備
合同会社設立のための事前準備は、会社の基本事項の決定会社印鑑の作成代表社員の印鑑登録証明書の準備の3つです。


会社の基本事項を決める

定款に記載される基本事項を決めていきます。
公告方法や発行可能株式総数などを決める必要がないので、株式会社の基本事項に比べて簡易的になります。

①会社の 「社員」は誰なのか決める
株式会社との最も大きな違いがこの会社構成です。
合同会社の場合、まず「社員」を決めます。
資本を出資してなおかつ経営に参加する人を「社員」といいます。

合同会社は出資者=「社員」となります。
原則として「社員」は会社の責任と経営の決定権を持つことになるので、第三者であっても出資をすれば経営に参加することになります。

1人で設立する場合は問題ありませんが、複数で合同会社を設立する場合、誰が「社員」になるのか慎重に決めるようにしましょう。
また、法人であっても出資すれば合同会社の「社員」になることができます。


② 代表社員、業務執行社員を決める

出資者全員が「社員」の場合、1人1人が平等に会社の代表権と業務執行権を持つことになります。
そういう形を取ってももちろんいいのですが、スム-ズに経営を行うためにも、出資者が2人以上いる場合はその中から代表社員業務執行社員を決めましょう。

代表社員と業務執行社員を決めることによって、「社員」の権限を明確に分けることができます。

「社員」が3人とした場合から、3人の中から2人を業務執行社員、さらにその2人の中から代表社員を決めた場合、以下のようにそれぞれの権限が変わります。

このように、代表社員と業務執行社員を決めることで、「社員」間の権限を自由に決めることができます。
右図を株式会社に置き換えた場合、代表社員=代表取締役、業務執行社員=取締役、社員=株主というようになります。

合同会社では、権限以外に利益配分についても定款に記載することで自由に決めることができます。
複数で設立する場合は、事前準備の段階できちんと話し合っておくようにしましょう。

③ 商号を決める
会社の名前を決めます。
株式会社同様、商号を決める際にいくつかル-ルがあります。

・商号の中に必ず「合同会社」を入れる
・「~支店」などのように、会社の一部門を表す文字は使用できない
・「銀行」、「学校」など法令で禁止されているものは使用できない
・公序良俗に反するものは使用できない
同一住所に同一の商号がすでに登記されている場合は使用できない

同一住所に複数の会社が存在している場合、同じ商号がすでに使用されていないか調査するようにしましょう。
法務局で直接聞くか、ネットの登記簿情報提供サ-ビスを利用することで調べることができます。

④ 事業目的を決める
事業目的(事業内容)を決めます。
前回のブログで事業目的について詳しくまとめたのでご参考ください。

事業目的を決める際に守るべき3つのル-ルと考慮する5つのポイント

⑤ 本店所在地を決める
本店所在地については、特に制限はありません。
事務所や自宅、バ-チャルオフィスなどでも問題ありません。

ただし、賃貸契約のマンションやアパ-トを本店所在地にする場合は、大家さんや管理会社にしっかりと確認しましょう。
また、バ-チャルオフィスなどを本店所在地にする場合、犯罪利用防止などの観点から、金融機関に口座開設を断られる可能性もあるので注意しましょう。

⑥ 事業年度を決める
4月1日から翌年3月31日までというような形で、事業年度を決めます。
事業年度も基本的には何月にしても問題ありませんが、決算期が事業の繁盛期と重ならないように決めるのがおススメです。

⑦ 資本金の額を決める
合同会社でも資本金は必要です。
金額に関しては、事業の信用面や設立初期の資金面などを考慮して決めましょう。

設立後に一から顧客を獲得する場合、3ヶ月~6ヶ月分の運転資金を資本金として用意しておきましょう。



会社印鑑の作成

株式会社と同じように、合同会社を設立する際も会社印鑑を作成します。
会社印鑑の3点セットを購入するのが一般的です。
必要な印鑑は以下の3つになります。

① 実印(代表者印、会社実印)
合同会社設立のために必ず必要になる印鑑です。
登記の際に登記書類と一緒に法務局に届出し、会社の実印として登録します。

会社設立後も契約書などに押印する、会社にとって一番大切な印鑑になります。

② 銀行印
法人の銀行口座開設や銀行取引の際に使用します。
実印で銀行関係の印鑑を兼ねることもできますが、万が一なくしてしまうリスクを考慮して銀行印を作るようにしましょう。

③ 角印
角印は必ずしも必要な印鑑ではありません。
しかし、見積書、請求書、領収書などに使用される、業務上最も使用する頻度が高くなる印鑑です。



個人の印鑑登録証明書を用意

上記は会社としての印鑑についてでしたが、それとは別に個人の実印も登記の際に必要になります。
1人で設立する場合はその人の、複数の中で代表社員を決めた場合は代表社員の印鑑登録証明書を用意します。

市町村役場で印鑑登録証明書は発行してもらえます。
実印の印鑑登録をしていない場合も、同じく市町村役場で登録することができるので、一緒に証明書を発行してもらいましょう。

ただし、印鑑登録証明書は発行から3ヶ月以内のものが有効になるので、登記申請する日から逆算して用意するようにしましょう。




  • 定款の作成
準備した基本事項などを基に実際に定款を作成していきます。


紙で作るか電子定款か

定款を作成する方法は、紙で作成するか電子定款を作るかの2つです。
どちらで作っても問題ありませんが、大きな違いとして紙で定款を作成する場合は4万円の印紙税がかかります

電子定款には専用のソフトの購入が必要なので、自分の力で電子定款を行うのは難しいです。
司法書士に合同会社設立を依頼すると手数料で約6万円かかりますが、この印紙代4万円を考慮すると専門家に依頼してしまったほうが得策といえるかもしれません。



紙での定款作成

定款作成からは専門家に依頼する方がおススメですが、自分で紙で定款を作る方法についてもお話していきます。

まず、以下のような定款の雛形に、上記で決めた基本事項などを記入していきます。
ネットで検索すればいくつか雛形がダウンロ-ドできるので、それらを利用しましょう。


また、合同会社の定款は自由度が高く、定款の記載事項も以下の3つのように分けられています。

① 絶対記載事項
絶対記載事項とは、合同会社の定款に必ず記載しなければいけない事項です。
以下の通りです。

・目的
・商号
・本店所在地
・社員の氏名又は名称及び住所
・社員の出資の目的
・社員の責任「社員の全部が有限責任とする」

② 相対的記載事項
相対的記載事項とは、記載しないとその効力を得られない事項のことです。
以下の通りです。

・業務執行社員の定め
・代表社員の定め
・利益の配当
・損益分配の割合
・退社の条件
・解散の事由   など

③ 任意的記載事項
任意的記載事項とは、記載しなくてもよいとされている事項のことです。
以下の通りです。

・公告の方法
・販売事業年度
・代表社員や業務執行社員の報酬   など



紙の定款を製本

上記の通り作成した定款を、A4用紙に印刷します。
この時、法務局提出用と会社保管用で2部印刷しておきましょう。

印刷した定款を順番ごとに重ね、左側を2、3箇所ホチキスでとめます。
ホチキスでとめた用紙の継ぎ目に、「社員」全員の実印で割り印を押して完成です。




  • 資本金の振込
定款の作成が終わったら資本金の振込を行います。
定款に記載されている額面通りに、実際にお金があることを証明するためにこの作業を行います。



代表社員の個人口座に資本金を振り込む

会社の銀行口座はまだ無いので、代表社員の個人口座に全ての出資金を振り込みます。
この時使用する口座は、既存のものを利用しても問題ありません。
ただし、その場合は他のお金と混ざらないように注意しましょう。

個人名がしっかりと記載されるように、「預入」ではなく「振込」で行いましょう。



通帳のコピ-を作る

振込の証明のために、通帳のコピ-を作ります。
コピ-は以下の3ペ-ジについて行います。

・表紙
・1ペ-ジ目(表紙裏)
・実際に振込をしたペ-ジ



振込証明書の作成

上記でコピ-した通帳3ペ-ジに表紙を付けて振込証明書を作成します。
振込証明書の表紙は以下の通り、ワ-ドで作成することができます。

赤線部に必要事項を記載し、最後に会社の実印を押します。

表紙、表紙(通帳コピ-)、表紙裏(通帳コピ-)、振込をしたペ-ジ(通帳コピ-)の順に左側2、3箇所をホチキスでとめます。
定款と同じように用紙の繋ぎ目に割印を押します。
この時使う印鑑は会社の実印です。




  • 登記書類の作成
いよいよ、最終段階です。
法務局に申請するための登記書類を揃えていきます。



登記申請書の作成

上記までで作成した書類とあわせて登記申請書を作成します。
登記申請書は、設立する「社員」の人数や、「社員」に法人が加わるかなどで必要書類が変わるので注意しましょう。
今回は「社員」1人又は2人の場合に必要な書類を以下でご紹介します。

登記申請書の様式や、全添付書類の記載例などは、法務局のホ-ムペ-ジで閲覧・印刷することができます。

http://houmukyoku.moj.go.jp/homu/COMMERCE_11-1.html

① 登記申請書
登記申請書は、商号や本店、課税標準金額(資本金額)、添付書類一覧などについて記載する書類です。
パソコンで雛形をもとに必要事項を記載し、A4用紙に印刷します。
印刷したら、余白に6万円の収入印紙を貼ります。
これが、登録免許税となります。


② 定款
上記で作成した、法務局提出用の定款を添付します。

③ 資本金決定書(代表社員及び資本金決定書)
資本金決定書は、合同会社の資本金を決定したことを証明するための書類です。
「社員」が2人の場合は、代表社員及び資本金決定書となり、代表社員の氏名も記載します。

④ 就任承諾書(「社員」が2人の場合)
就任承諾書とは、代表社員に選ばれた人が、代表社員の就任を承諾したことを証明する書類です。
「社員」1名で設立する際には必要ありません。

⑤ 代表社員の印鑑登録証明書
上記の事前準備で用意しておいた、代表社員の印鑑登録証明書を添付します。
証明書の大きさが小さい場合は、A4の用紙にのり付けしましょう。

⑥ 振込証明書
上記で作成した、資本金の振込証明書を添付します。



登記すべき事項をCD-Rに保存して提出

「登記すべき事項」について、必要事項をCD-Rなどに保存して一緒に提出します。
CD-Rの種類や、記録の方法については、法務局の「商業・法人登記申請における登記すべき事項を記録した電磁的記録媒体の提出について」をご参考ください。

http://www.moj.go.jp/MINJI/MINJI50/minji50.html


会社実印の印鑑届書を作成

事前に作成しておいた会社の実印を、「代表者印」として法務局に登録します。
以下の赤枠内に必要事項を記載し、押印をして提出します。

印鑑届書の用紙は法務局ホ-ムペ-ジからダウンロ-ドすることができます。
http://houmukyoku.moj.go.jp/homu/COMMERCE_11-2.html



  • 登記申請
それでは、作成した登記書類を法務局に申請します。


直接法務局の窓口に持っていこう

申請は直接窓口に行くほかに、郵送によって行うこともできます。
しかし、郵送だと途中で書類が紛失する場合も無きにしも非ずですので、直接窓口に持っていくようにしましょう。



登記申請日が会社の設立日

会社の設立日は登記が完了した日ではありません。
登記書類を提出した日が設立日となります。

また、登記の完了は2日~2週間前後と、地域によっても異なるのでご注意ください。



登記完了まででかかる費用

自分で全てやった場合と、司法書士などの専門家に依頼した場合とで、合同会社設立にかかる費用は次のようになります。

① 自分で全てやった場合
自分でやった場合にお金がかかるものは以下の通りです。

・定款の収入印紙:4万円
・登録免許税:6万円
・印鑑作成費用

総額で10万円+αとなります。
自分で行う場合はこれ以外にも、法務局までの交通費などもかかります。

② 司法書士などの専門家に依頼した場合
司法書士などの専門家に依頼すると、電子定款により4万円の印紙代が無くなり代わりに手数料がかかります。

・登録免許税:6万円
・司法書士手数料:7万円弱(当事務所の知り合いの司法書士の場合)
・印鑑作成費用

総額で13万円+αとなります。




  • 会社設立後の各種手続き
上記までで合同会社設立までは完了ですが、実際に会社を運営していくためには、登記以後も各関係機関に手続きを行わなければいけません。

ここから先は株式会社と一緒です。
各種手続きの具体的な方法については、以前のブログをご参考ください。

税理士に相談する前に知っておきたい会社設立後の7つの手続き




  • まとめ
いかがだったでしょうか?
株式会社設立に比べると、非常に簡単に合同会社を設立することができます。

ITやネットビジネスが発展するにつれて、合同会社の普及度も今後さらに増えていくことが予想されます。
設立にかかる費用も、株式会社の半額以下となるので、創業から法人でスタ-トするという選択肢もさらに身近になるのではないでしょうか?

ただし、設立が簡単とはといっても、税務や会計は株式会社とほとんど変わりません。
法人の決算は確定申告よりはるかに複雑で面倒なので、会社設立の際は必ず専門家に相談するように心がけましょう。



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