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サラリ-マンが個人事業を開業するためにやっておきたい17の準備
昔と違い、同じ会社に定年まで勤め上げるという考えの若い人は少なく、転職や独立によってキャリアアップを目指す人が増えてきました。
独立には、起業して会社を興すこと以外に、個人事業として開業するという手段があります。
会社を設立することに比べると、個人事業として開業する方が手軽です。
しかし、行き当たりばったりで開業して上手くいくほど、事業は甘くはありません。
資金の準備や店舗場所の策定、営業方法、経営計画など少なくとも3年前後の準備期間が必要です。
今回のブログでは、個人事業開業のために必要な事前準備についてお話していきます。
- 会社を退職する・した時にやるべき6つのこと
開業をお考えの方で現在会社勤めの方は多いと思います。
まずは、会社を退職する時にやっておかなくてはいけないことをご紹介します。
国民年金・国民健康保険への加入手続き
会社勤めの時は、厚生年金と健康保険に加入していました。
しかし、退職するとこれらから脱退し、個人で国民年金と国民健康保険に加入することになります。
① 国民年金への切替
厚生年金から国民年金への切替手続きは以下の表のようになります。
手続き場所 | 住所地の市区町村役場の国民年金窓口 |
期限 | 退職した日から14日以内 |
必要書類 |
・年金手帳 ・印鑑 ・離職届などの退職日が証明できるもの ・身分証明書 |
② 国民健康保険への切替
健康保険から国民健康保険への切替手続きは以下の表のようになります。
手続き場所 | 住所地の市区町村役場の国民健康保険窓口 |
期限 | 退職した日から14日以内 |
必要書類 |
・印鑑 ・身分証明書 ・社会保険の資格喪失証明書などの退職日が証明できるもの(※) |
※ 市区町村によって必要な書類が異なるので、事前に確認しましょう。
退職金についての確認
退職金が貰えるのか?貰えるのであればいくらもらえるのか?
退職金の金額次第で、事業立ち上げまでの計画も変わってくると思うのでしっかりと確認しておきましょう。
退職金についての注意は金額だけではありません。
退職金は、給与などの所得と分離して所得税がかかってきます。
退職金の所得税について、後々確定申告をしないために「退職所得の受給に関する申告書」を会社に提出しましょう。
この申告書を提出することで、支払者である会社が所得税と住民税を計算し、退職金から差し引いて納付するので、確定申告が不要になります。
仮に、提出しなかった場合、退職金の収入金額から一律で20.42%という、本来払うべき金額より多く所得税が源泉徴収されてしまいます。
多めに源泉徴収された分を還付するには、確定申告をして精算となるので必ず提出しましょう。
赤枠で囲ったAの部分は全員が記入します。
以前にも退職金の受給があった場合など、B欄以降に記入を行います。
雇用保険による失業給付手続き
仮に、会社を退職して開業までの期間が未定の場合、生活保障のために失業給付の手続きを行いましょう。
手続きは、住所地を管轄しているハロ-ワ-クで行います。
手続きの際は以下の書類が必要になります。
・雇用保険被保険者離職証明書(※)
・マイナンバ-カ-ドなどの個人番号確認書類
・運転免許証などの身元確認書類
・証明写真 2枚
・印鑑
・本人名義の預金通帳又はキャッシュカ-ド
※ 「雇用保険被保険者離職証明書」は退職者の希望により会社が作成するものです。
また、手続きを行ったからといって、必ず受給できる訳ではありません。
受給のために以下の2つの要件をいずれも満たす必要があります。
1.就職しようとする積極的な意思があり、いつでも就職できる能力があるにもかかわらず、職業に就くことができない失業状態であること
2.離職の日以前2年間に、被保険者期間(※)が通算して12ヶ月以上あること
(会社都合退職などの場合、離職の日以前1年間に、被保険者期間が通算6ヶ月以上でも可)
※ 被保険者期間とは、雇用保険の被保険者であった期間のうち、11日以上勤務した月を1ヶ月として計算します。
具体的な手続き内容については、ハロ-ワ-クインタ-ネットサ-ビスのホ-ムペ-ジをご覧ください。
http://www.hellowork.go.jp/insurance/insurance_guide.html
住民税の残高の精算
これまで、住民税を毎月の給与から徴収される制度(特別徴収)をとっていた場合、退職する際、残りの住民税をどのように支払うかを選択します。
この支払方法は2つあります。
1つ目は、残りの住民税を最後の給与から一括で徴収し納付する方法。
2つ目は、あとから自分で納付する方法(普通徴収)。
普通徴収とは、6月・8月・10月・1月の通常年4回に自分で納付する制度です。
9月に退職した場合、10月と1月の2回で残額を支払うことになります。
ただし、市区町村によって方法が異なる場合があるので、退職する前に会社や自治体に相談するようにしましょう。
届いた源泉徴収票は必ず保存しましょう
退職して1、2ヶ月経つと、会社から「給与所得者の源泉徴収票」が郵送されてきます。
これは、その年1年間の収入金額や、源泉徴収によって納めた税額などが記載されています。
退職した年と事業を開始した年が同じで、事業によって所得又は損失が生じている場合、確定申告の際に「給与所得者の源泉徴収票」を添付することになるので、大切に保管しましょう。
保険に加入
個人事業主になると、これまで以上の社会的責任を負うことになります。
借入金の返済や家族の生活保障など、万が一の事態に備えて保険に加入しておくことをおススメします。
生命保険、個人年金、介護医療保険については、保障だけでなく「生命保険料控除」として税務面でも有利に働きます。
- 事業の事前準備でやっておくべき7つのこと
次に、開業前に必ず準備しておくべきことをいくつかご紹介します。
屋号を決める
事業として開業する時にまず必要な名前を決めます
会社の場合は商号といいますが、個人事業の場合は屋号といいます。
名刺に自分の名前だけでなく、屋号名もしっかりと入れておくことで、事業としての信用度も増すので必ず決めるようにしましょう。
屋号は基本的に自由に決めることができますが、一般的に以下のことがポイントとしてあげられます。
① 覚えやすい名前
取引相手にすぐに覚えてもらうために、覚えやすい簡潔な名前にしましょう。
電話で応対する際のことも考えると、覚えやすさの他に言いやすさも大事になってきます。
② 印象に残る名前
一度聞いたら相手の印象に残るような名前を考えましょう。
ただし、懲りすぎて逆に分かりづらくならないように注意です。
③ 事業内容が分かりやすい名前
事業内容に結びつきやすい名前にしましょう。
名前を見ただけで何屋さんなのか分かれば、営業や集客の際に便利になります。
④ 開業場所にちなんだ名前
業種によっては、その地名を入れてみるのもいいかもしれません。
地名を入れることで、事業に地域性を持たせることができます。
事業所の場所・店舗選び
事業所の場所選びは、飲食店や美容院などの個人事業にとって最も重要といっても過言ではありません。
事業内容に合わせて、有利な場所を確保できるようにしましょう。
なお、場所選びのためにかかった交通費などは後で経費にできるので、領収書やレシ-トは保存しておきましょう。
場所選びでのポイントは以下の通りです。
① 客層をチェック
その場所周辺の客層を調べましょう。
周辺にオフィスビルが多いのか、住宅地が多いのかなどによって、タ-ゲットとなる年齢層がどれくらいいるのか調べていきましょう。
② 競合他店のチェック
周辺に競合店がどれくらいあるのか調べましょう。
また、繁盛している店があればその理由も調べましょう。
③ 交通状況をチェック
近くの駅の規模や、駅からの距離を調べましょう。
また、車での来客を想定する場合は、駐車場の有無や道路状況なども一緒に調べておきましょう。
④ 避難経路など安全性をチェック
雑居ビルなどに店舗を出す場合は、そのビルの安全性についてもしっかりと調べておきましょう。
営業規定を決める
事業内容に限らず、営業していく上での規定を決めていきます。
営業規定には以下のようなものがあります。
① 営業時間
客層に合わせた営業時間にするのはもちろんですが、働くうえであまり無理のないようにしましょう。
② 受付時間
電話の対応時間であったり、ラストオ-ダ-の時間を決めましょう。
閉店ギリギリで来店や電話があると、営業終了までの短い時間で真摯な対応ができない場合があります。
結果として、新規のお客様を逃すことにもなりかねないので、予め設定しておきましょう。
③ 定休日
来客の少ない曜日や、競合店との兼ね合いなどで定休日を決めましょう。
④ 料金設定
常に頭を悩ませることになると思いますが、利益率や競合店の料金設定などもしっかりと調査して決めていきましょう。
商品ごとに値段を変えたり、季節・時間帯に応じた割引なども検討しましょう。
⑤ 支払い方法
支払い方法をどれだけ用意するか決めましょう。
現金払い、銀行振り込み、カ-ド払いなどなど、お客様目線で言えば様々な支払方法があるほうが便利です。
しかし、経営者目線で言うと、できるだけ現金で確保しておきたいところです。
業種によっても必要な支払い方法は変わってくるので、競合店を参考にしつつ決めていきましょう。
開業日を決める
開業日とは読んで字の如く、事業を開始する日です。
開業届を提出する際に開業日を定めなくてはいけません。
個人事業の場合はある程度自由に決めることができるので、開店準備が整った日や、実際にオ-プンした日などを開業日とするようにしましょう。
また、届出の提出期限は、開業日から何か月以内と定められているものも多いので注意しましょう。
ホ-ムペ-ジやチラシの作成
ただ開業してお店を構えただけでは、集客としては不十分です。
チラシやパンフレットは広告として対外的な顔となるので、事業所の準備と並行して作っていきましょう。
また、ネット・スマホ時代の現代にとって、ホ-ムペ-ジは必須といえます。
予算的に余裕があればこちらも用意しておきましょう。
ホ-ムペ-ジを上位表示させるためのコンテンツ作成なども時間がかかるので、事業開始前のほうがおススメです。
名刺の作成
必須の営業ツ-ルとして、名刺を作成します。
ありきたりな名刺では無く、相手の印象に残るような工夫を凝らしましょう。
名刺に記載すべき事項として以下のようなものがあります。
・氏名
・屋号
・住所
・電話番号
・FAX番号
・携帯電話番号
・メ-ルアドレス
・ホ-ムペ-ジURL
などです。
領収書などの取引書類の作成
商売で発生する取引の証拠として、取引書類を作成する必要があります。
代表的な取引書類として、以下のようなものがあります。
① 領収書
領収書とは、代金の受取人が支払者に対して、商品などの対価として金銭を受け取ったことを証明するために発行する書類のことです。
② 請求書
請求書とは、金銭の支払などの行為を求めていることを相手に通知するために発行する書類のことです。
③ 見積書
見積書とは、金額・量・期間・行動を前もって概算し書面に記載したもののことです。
これら取引書類は、「ビジネステンプレ-ト」のホ-ムペ-ジから無料でダウンロ-ドすることができます。
Excelで編集することができるので是非ご参考ください。
http://template.the-board.jp
- やっておくと後々便利な4つのこと
続いては、事業前に準備しておくと財務や記帳の面で便利なことをいくつかご紹介します。
事業用の銀行口座の開設
すでにお持ちの口座とは別に、事業専用の銀行口座を開設します。
売上は全て事業用の口座に入金し、仕入などの経費の支払いも全て事業用の口座から出金するようにしましょう。
個人事業主として得た収入は個人の生活費だけでなく、今後の事業資金としても使わなければいけないため、資金の公私混同は命取りになります。
銀行口座を分けることで、生活費と事業資金を明確に区別するようにしましょう。
自分の生活費を決める
事業用の銀行口座を開設したら、月に一度定額を個人の口座に振り込みます。
このお金を生活費や個人支出として使用します。
問題はこの生活費いくらにするかということです。
給与所得者の時は受け取った収入は全て自由に使うことができましたが、個人事業主となるとそうはいきません。
事業資金が底をつかないように生活費を決定していきます。
生活費の目安は以下のようになります。
※ 所得金額=収入-経費
また、借入金の返済や事業規模拡大のための貯蓄が必要であれば、上限はさらに低くなるので注意しましょう。
事業支出用のクレジットカ-ドの作成
上記の銀行口座ほど重要度は高くありませんが、事業用の買い物専用のクレジットカ-ドを作成しましょう。
仕入や消耗品・備品を購入する際に事業用のクレジットカ-ドで購入すれば、後々帳簿に整理する際に非常に便利です。
また、「資金の確保」という観点から見ても、カ-ド払いによって支払いを遅くすることは、現金払いと比べて有利になります。
ただし、クレジットカ-ドの明細書だけでは買い物の詳細が分からないので、領収書はそれぞれ保存しておくようにしましょう。
印鑑の作成
個人事業主となると個人の印鑑だけでなく、屋号の入った印鑑が必要になってきます。
法律的には個人の印鑑でもいいのですが、体裁的には専用の印鑑があったほうが事業の信用度も増します。
改めて準備すべきものとしては、取引書類などに捺印するための「角印」が必要になります。
また、アドレス印のような屋号と住所が入った印鑑もあると実務面で便利です。
契約書などに捺印する場合は、印鑑証明を受けた個人の実印を使用することになります。
- まとめ
今回は個人事業開業までの準備についてお話しました。
もちろんお話した以外にも、まだまだやるべきことはあるかと思いますが、一つの参考としてご覧頂ければと思います。
開業に際して届出が必要な提出書類は、次回のブログ「個人事業を新規開業する時に必要な10の提出書類とその書き方」を参照ください。