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年収 | 控除額 | 課税所得額 |
300万円 | -108万円 | 192万円 |
500万円 | -154万円 | 346万円 |
700万円 | -195万円 | 505万円 |
1,000万円 | -220万円 | 780万円 |
② 所得税と法人税の税率の差
個人事業主の所得税は累進課税なので、所得が増えれば増えるほど、税率も上がります。
しかし、法人税の税率は一定なので、所得が大きくなるほど会社にしたほうが節税になると言えます。
個人事業の場合
所得税率は最高で45%、住民税と事業税を合わせれば、最高で税率は50%を超えます。
それに対し法人の場合
法人税は最高で23.9%、地方法人税などを合わせても、税率は30%を超える程度が最高です。
個人の所得税と住民税は、所得695万円を超えると34%、所得900万円を超えると44%となります。
所得金額が700万円以上、900万円以上が、税率差上の法人との分岐点といえるでしょう。
③ 損金を最大9年間繰越できる
その年の所得がマイナスの場合、その金額を翌年以降の所得から控除することができます。
この繰越の最長期間が
個人:3年間
法人:9年間
となっています。
繰り越しても期間内に控除しきれなかった場合、残りは切り捨てになってしまうので、繰越期間は長いほど有利といえます。
④ 消費税の免税
個人事業であれ、法人であれ、創業から2年間は消費税が原則免税になります。
なので、個人事業で翌年から課税対象者になる場合に、その時点で法人成りすればさらに2年間の免税を受けることができます。
しかし、免税の例外として
・資本金が1,000万円以上
・設立1年目の半年間の売上等が1,000万円を超える場合
これらに当てはまる場合は免税の対象外となります。
⑤ 家族に給与を支払うことができる
法人化すれば、家族にも役員報酬または給料を支払うことができます。
これにより、家庭内での所得の分散が可能になります。
所得税は累進課税なので、分散して税率を下げることで節税することができます。
①でお話した給与所得控除を家族に適用することもできるので、所得の分散は非常に効果的といえます。
個人事業でも、税務署に届出をした場合、事業専従者として給与を支払うことはできます。
しかし、金額上限、事業就労実態、人数、同一生計、配偶者控除や扶養控除の適用など制限が多いので、法人化したほうが節税しやすいです。
⑥ 住まいを社宅として経費に
個人事業の場合、マンションなど自宅で仕事をしている割合に応じてしか家賃を経費にすることができません。
どんなに経費にしようとしても家賃の50%も経費にすることができないと思います。
もちろん、職場が自宅以外の場合は家賃は1円も経費になりません。
しかし、会社の場合は社宅という形をとることで家賃の全額を経費にすることができます。
会社が直接賃貸契約をして、その部屋を社長に貸すということにします。
こうすることで、家賃は全額会社の経費となり、会社は社長から家賃負担分をもらう、ということになります。
この時の家賃負担額は税法で決められたおり、20%弱~50%ほどとなっていますので、自己負担額をかなり抑えることができます。
⑦ 会社なら保険料も経費に
個人事業の場合、生命保険などの保険料は、最大でも12万円までしか、所得控除されません。
しかし、法人の場合、掛け捨ての保険であれば保険料の全額を費用として計上することができます。
積立の場合でも、保険料の半額は経費として計上できるので、大きな節税方法といえます。
ただし、解約時や満期時に保険金が入ってくる時は、利益として課税されることになります。
⑧ 食事代がちょっとだけ非課税に
普通、日々の食事代を経費にすることはできません。
事業に関係なく生活するうえで必要なお金だからです。
しかし、法人の場合は食事代の一部を経費にすることができます。
そのためには、以下の条件を満たす必要があります。
・食事の価額の50%以上を従業員(役員含む)が負担すること
・会社の負担額が、従業員につき月額3,500円(税抜)であること
この2つを満たす部分を経費にすることができます。
つまり、1ヶ月の昼食代が7,000円(税抜)までは、半額を経費にすることができるということです。
昼食代がそれ以上になる場合は、経費になるのは3,500円(税抜)で一定です。
節税としての効果は小さいですが、知っているとちょっとお得な節税方法となります。
⑨ 退職金を支給して節税
個人事業の場合、廃業して終わりですが、法人は、役員に対して退職金を支払うことができます。
この退職金は会社の経費になるので節税になります。
しかし、退職金の利点はそれだけではありません。
退職金は、所得税法上「退職所得」という所得になります。
この退職所得は給与所得などに比べて、税金の計算が非常に優位です。
退職所得と税額は以下の手順で求めます。
(1)「退職所得控除額の計算」
勤続年数(=A) | 退職所得控除額 |
20年以下 | 40万円×A(80万円未満は80万円) |
20年超 | 800万円+70万円×(A-20年) |
※1年未満の端数は1年に繰り上げます。
(2)「課税退職所得額の計算」
退職手当の支給額から(1)で求めた退職所得控除額を控除した残額を1/2したものが課税退職所得額になります。
課税対象 =(退職金-控除額)×1/2
(3)「税額の計算」
(2)の課税退職所得金額に応じて、「所得税の税額表」の税額速算表に基づいて税額が計算されます。
例)「退職金3,000万円、勤続年数29年3ヶ月の場合」
(1) 800万円+70万円×(30-20)=1,500万円
(2) (3,000万円-1,500万円)×1/2=750万円
(3) 750万円×23%-636,000円=1,089,000円
となります。
退職金3,000万円に対して税額108万9千円なので、税率はわずか3.63%となります。
参考:国税庁ホ-ムペ-ジ
http://www.nta.go.jp/publication/pamph/koho/kurashi/html/02_3.htm
税務以外での7つのメリット
⑩ 社会的信用度が上がる
法人成りして会社になると、商号、本店、目的、資本金、役員等が登記されるので、個人事業に比べて信用が上がります。
会社によっては法人相手にしか取引をしないといった会社も存在するので、事業規模を拡大する上でも大きなメリットといえるでしょう。
また、「株式会社○○ 代表取締役社長 ○○」という肩書が付くだけでも、名刺交換の際の印象がかなり変わってきます。
⑪ 資金調達がしやすくなる
会社になることで、個人の時と比べて、銀行などの金融機関から融資を受けやすくなります。
個人事業で融資を受けようとする場合、第三者保証人を要求されるなど審査が厳しくなります。
一方で、法人の場合は貸借対照表と損益計算書が作成されるので、金融機関も明確に返済能力などを審査することができ、広く資金調達の可能性が開かれています。
⑫ 人材採用の幅が広がる
法人化したほうが採用の面でも有利です。
働く側としては、個人のもとより正社員として働きたいという思いが強いです。
より優秀な人材を確保するためには法人化は必須といえるでしょう。
⑬ 決算日を自由に決めることができる
個人事業の場合、事業年度は1月~12月、確定申告は3月15日までと決まっています。
しかし、法人の場合は決算日を自由に決めることができるので、繁忙期に決算業務が重ならないようにすることができます。
⑭ 事業主と専従者も社会保険に加入することができる
個人事業の場合、事業主と専従者は社会保険に加入することができません。
しかし、法人の場合は加入が義務付けられています。
健康保険も厚生年金も、個人の時よりも保障が多くなるので、将来のことを考えるとメリットといえるでしょう。
⑮ 相続税がかからない
個人事業の場合、事業主が亡くなると全ての財産が相続の対象となり、最高で55%の相続税がかかります。
法人の場合、会社の所有資産には相続税がかかりません。
ただし、株式は相続税の対象となります。
⑯ 有限責任となる
会社を設立した場合、個人はその会社の株主となります。
仮に会社が倒産したとき、会社の保証人となっている場合を除き、借入金の返済などは株主の出資の範囲でのみ責任を負います。
個人事業で倒産した場合は、自腹を切ってでも返済しなくてはならないので、最悪自己破産ということもあり得ます。
個人 | 法人 |
所得税 | 34万円 | 所得税 | 14万円 |
住民税 | 39万円 | 住民税 | 24万円 |
事業税 | 10万円 | 事業税 | - |
法人住民税 | - | 法人住民税 | 7万円 |
合計 | 83万円 | 合計 | 45万円 |
個人 | 法人 |
国民健康 | 58万円 | 健康保険 | 28万円 |
国民年金 | 19万円 | 厚生年金 | 45万円 |
合計 | 77万円 | 合計 | 73万円 |
個人 | 法人 |
所得税 | 134万円 | 所得税 | 82万円 |
住民税 | 85万円 | 住民税 | 63万円 |
事業税 | 35万円 | 事業税 | - |
法人住民税 | - | 法人住民税 | 7万円 |
合計 | 254万円 | 合計 | 152万円 |
個人 | 法人 |
国民健康 | 93万円 | 健康保険 | 57万円 |
国民年金 | 19万円 | 厚生年金 | 68万円 |
合計 | 112万円 | 合計 | 125万円 |
2018年4月18日 11:15
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